事例

上場株式とは異なり、非上場株式はマーケット(東京証券取引所など)で売買ができないため、「買い手が見つからない」「売りたくても売れない」状況に陥ることが殆どです。 中でも、譲渡制限がついている株式の売却は、特に困難を極めます。

譲渡制限株式とは

株式を譲渡する際には会社の承認を必要とすることを定款で定めている株式を「譲渡制限株式」と言います。家族経営の会社、ファミリービジネスなどは、株主を親族や信頼関係のある関係者に限定したいという気持ちが強く、上場していない会社のほとんどで譲渡制限株式が利用されています。

譲渡制限株式の評価を巡る裁判

売却を考えた場合、その売却先の候補として真っ先に上がるのがその株式の発行会社です。発行会社としても、得体の知れない第三者に株式が渡り経営に口出しをされるよりも、株主は親族や古くからいる従業員など信頼できる人間で固めておきたい、というのが本音でしょう。 しかし、売り手である少数株主と、買い手である発行会社の間で株式の評価を巡ってトラブルや裁判にまでに発展するケースも数多くあります。

譲渡制限株式の裁判所による決定事例

平成以降に裁判が行われた、譲渡制限株式に関する「株式売買価格決定申立事件」の裁判所による決定事例です。 売主・買主双方の主張に大きな乖離があることが、事例からも分かります。

対象会社 年度 1株当たりの価格(円) 総額(円)
売主 買主 裁判所 売主 買主 裁判所
ダスキン(株) 平元 13,580 2,754 4,687 254,408 16,899,941 87,806
㈱緑測器 平2 2,664 960 1,359 49,907 16,899,941 25,460
酸素ガス製造業 平16 10,498 3,370 10,387 196,680 63,134 194,590
テレネット・ジェイアール㈱ 平20 25,000 6,572 12,929 468,350 123,120 242,212
㈱ホスピカ 平21 902,100 75,000 103,261 16,899,941 1,405,050 1,934,492
大成土地㈱ 平25 2,664 2,067 2,460 58,993 38,723 46,086
トーフレ㈱ 平27 12,996 1,958 2,195 243,467 36,681 41,121
㈲トーフレ企画 平27 20,951 1,058 1,298 392,496 36,681 24,317

(出典:会社・株主間紛争の非上場株式評価実務/中央経済社/税理士法人髙野総合会計事務所)

対象会社 年度 1株当たりの価格(円)
売主 買主 裁判所
ダスキン(株) 平元 13,580 2,754 4,687
㈱緑測器 平2 2,664 960 1,359
酸素ガス製造業 平16 10,498 3,370 10,387
テレネット・ジェイアール㈱ 平20 25,000 6,572 12,929
㈱ホスピカ 平21 902,100 75,000 103,261
大成土地㈱ 平25 2,664 2,067 2,460
トーフレ㈱ 平27 12,996 1,958 2,195
㈲トーフレ企画 平27 20,951 1,058 1,298
対象会社 年度 総額(円)
売主 買主 裁判所
ダスキン(株) 平元 254,408 16,899,941 87,806
㈱緑測器 平2 49,907 16,899,941 25,460
酸素ガス製造業 平16 196,680 63,134 194,590
テレネット・ジェイアール㈱ 平20 468,350 123,120 242,212
㈱ホスピカ 平21 16,899,941 1,405,050 1,934,492
大成土地㈱ 平25 58,993 38,723 46,086
トーフレ㈱ 平27 243,467 36,681 41,121
㈲トーフレ企画 平27 392,496 36,681 24,317

(出典:会社・株主間紛争の非上場株式評価実務/中央経済社/税理士法人髙野総合会計事務所)

上場企業では、取引相場によって定まる時価がありますが、取引市場がない非上場株式には時価がありません。そのため各種の評価方法を定期用し、株式の価格を算出する必要がありますが。この評価方法の選択が原因で、売主と買主が主張する株式の価格に乖離が生まれます。

㈱ダスキン事件(株式売買価格決定申立事件)

大阪高裁平成元年3月28日決定㈱ダスキン株式について、売主(個人株主3名)の主張価格13,580円・買主(ダスキン共栄㈱)の主張価格2,754円に対して、裁判所は決定価格を4,687円としました。

個人株主3名の合計㈱数は18,734株で、持ち株割合は0.5%です。売主と買主の両者とも非支配株主であり、配当利益を期待する以外に他の評価方法を併用する余地がないことから、100%配当還元法での評価となりました。ただ、配当還元法の割引率の違いが主な争点となり、主張価格と裁判所の決定価格に差が生じました。

評価方法 売主の主張 買主の主張 裁判所の判断
収益還元法
配当還元法 100%
類似業種比準法
純資産法

酸素ガス製造業事件(株式売買価格決定申立事件)

札幌高裁平成17年4月26日決定
売主(個人株主1名)の推定主張価格10,498円・買主(法人)の主張価格3,370円に対して、裁判所は決定価格を10,387円としました。

売主は配当還元法と純資産法の併用方法が適当と主張しましたが、裁判所は折衷案を採用しました。

評価方法 売主の主張 買主の主張 裁判所の判断
DCF法 50%
収益還元法
配当還元法 25%
類似業種比準法
純資産法 25%

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